地域社会は、その範囲も性格もさまざまです。時代が大きく転換するなかで、地域社会の構成も変わり、その運営のしかた、公共サービスのありかた、まちづくりの考え方も変化しつつあります。個々人がともに生活し、将来をゆだねるに足る地域は、どのような地域社会であるべきか、改めて問われています。地域社会は多様なメンバーで構成されていますが、すべてのメンバーが地域の今後を左右するのです。地球規模の視点が重要になると同時に、ローカルな世界の重要性が増し、その個性や面白さが注目されています。個性的な地域社会が存在しなければ、グローバルな世界に豊かな個性はありえません。
「地域社会ネットワーク」領域では、さまざまな地域社会が動いている現場に学び、多様なメンバーと地域社会との関わりを観察し、課題解決の方法を考えるための科目が設置されています。
世界では、国境を越えた人の移動や交流が、かつてない規模で進む一方で、市場経済のグローバル化に伴う格差の拡大が、新たな不公平感や憎悪を生み出しています。先進国では大量の食料が捨てられる一方で、途上国では多くの人々が餓死する―そうした構造的暴力(structural violence)による絶望と怒りが、紛争やテロを引き起こす要因ともなっているのです。民族、文化、宗教、言語の異なる人々が共に生きる社会を実現するためには、意見の違いや利害対立を嫌悪や(武)力に向かわず、平和的に調整・解決する知恵と手法を培うことが大切です。各々の文化的多様性を尊重し、従来の国家安全保障(national security)に代わる1人1人の「人間の安全保障(human security)」を確保し、他者の犠牲の上に成り立つのではない、持続可能な社会発展を実現する必要があるのです。「アジア国際共生」領域では、将来、国際共生の理念をもって、グローバルな社会で活躍できる公務員やNGO/NPO(福祉団体を含む)職員、企業人(日系企業の国外支社や外国の企業など)などの育成を目指し、アジア・世界の社会や文化、国際協力や多文化共生の課題等を学びます。
Ⓠ.アジア国際領域が目指す教育とは?
Ⓐ.真の国際人の育成を目指します
異なる民族、文化、宗教、言語を持つ人々との違いを理解し、認め合い、共存していける真の国際人の育成を目指します。日本では外国にルーツをもつ人々が増え、国際結婚比率も高まっています。国境を跨いで活躍する人材だけではなく、日本の国内、地域、自治体レベルでも、異なる人々が共に生きる社会、多様性が共存する社会を実現できる人材の育成が、ますます求められるようになっています。
Ⓠ.国際共生を視点に何が学べるの?
Ⓐ.グローバル社会の理解
政治、経済、文化、歴史など社会科学の諸分野を横断して国際的な視点から学び、共に生きる世界を築くためになにが必要かを考えます。国際政治分野では、国家の代表のみが行う伝統的外交から、より多くの市民が意思形成に関わるグローバル・ガバナンスへの変容が進む世界の流れを学びます。国際経済分野では、国家間の経済活動にかんする理論・歴史・政策を学び、国際的な視野から物事を捉える視点を育み、アジア地域を中心とする国際経済学のビックイシューについて考えます。国際社会分野では、豊かな国が富む一方で貧しい国はますます貧しくなるのはなぜなのか、異なる文化に対する寛容性が高い国・地域とそうではない国・地域には、どのような制度的、文化的背景があるのかを学んでいきます。
Ⓠ.福岡と世界との関係は?
Ⓐ.アジアに近い主要都市・福岡
福岡は、中国最大の商業都市・上海まで飛行機で約1時間半(545マイル)、東アジアのハブ空港インチョン空港(ソウル)まで数十分(337マイル)の位置にあります。東京(566マイル)や大阪(289マイル)とおなじ距離にアジアの主要都市がある福岡には、東京や大阪につぎ多くの領事館がおかれ、国連ハビタット、ジェトロ福岡、ジェトロ北九州、JICA九州など国際的な諸機関もあります。福岡を視点の中心におくと、東アジアの中で共存関係を高めていく21世紀の日本社会の姿が展望できます。