要約

 エジプトにおける宗教的マイノリティ、コプト・キリスト教徒が20世紀前半の教育においてどのような状況におかれていたかを示すのが本稿の目的である。この時代、公教育における宗教教育の問題、すなわちイスラームを国教とする国家がコプトの宗教教育とどのようにかかわるべきか、あるいは、かかわるべきでないかという問題をめぐり政治的な議論が活発におこなわれ、多くの先行研究もそれについて触れてきた。しかし、その一方で、社会的にはより重要だと思われる現象について先行研究はほとんどまったく触れていない。それは19世紀末からこの時代にかけてコプトたちが教育のメリトクラシーにおいてムスリムたちよりもはるかに優位な状況にあったということである。本稿ではコプトたちの教育戦略がどのようなものであったか、そしてその結果としてかれらの優位がどれほどのものであったかを統計資料を用いて明らかにする。    

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