要約

 公的扶助ケースワークは、行政組織の一つである福祉事務所において公務員としての現業員(公的扶助ケースワーカー)によって展開される対人援助技術である。この公的扶助ケースワーカーが所属する福祉事務所という行政組織は、官僚制と専門性が交錯する場である。また公的扶助ケースワーカーのような第一線組織の準専門職は、ストリートレベル官僚とも呼ばれ、この官僚制の下ではクライエント支配が構築されやすい。さらに公的扶助ケースワークにおいては、裁量性が多分に求められるとともに、倫理的ディレンマをも公的扶助ケースワーカーは体験する。そしてこのディレンマ体験は専門性意識が強いほど深い。  さてこの公的扶助ケースワークにおける裁量性や専門性は、「適正化」政策の下で狭小化、希薄化し、公的扶助ケースワークそのものも形骸化してきた。そして今、生活保護法改正にあたって公的扶助ケースワークは、これまでのように行政組織における経済給付との機能一体か、それとも機能分離か、さらには公的責任の堅持か、はたまた行政組織外へのアウトソーシング化か、その方向性が大きく問われている。 

キーワード

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