要約

 本研究の目的は、小学校における大学生のティーチング・アシスタント(TA)活動が児童に与える影響を吟味することであった。被験者は、T市立A小学校3年生〜6年生の各学年2クラスずつ、計8クラス(N=246)であった。実施期間は、2002年11月〜2003年1月の9週間で、毎週火曜日と木曜日の午前中であった。 学校モラールの調査は、TA導入の前後に、4,5,6年生児童を対象に学校生活アンケート(22問)及び、3,4,5,6年生児童の保護者を対象に同様の学校生活アンケート(18問)を実施した。この保護者を対象とした質問は、結果的に3年生児童の学校モラールを間接的に測定することになった。2種類の学校生活アンケートは、いずれもリッカート・タイプの5段階評定尺度である。 児童の回答によるTA導入前後の学校モラールの変化は、4年生児童では、予想通りほとんど変化を見いだせなかったが、5年生児童ではネガティブ変化、6年生児童ではポジティブ変化が見いだされた。しかし、5年生児童に見られたネガティブ変化は、TA導入に起因する効果ではなく、担任教師の出産休暇による効果であることが判明した。6年生児童のポジティブ変化は、部分的にではあるがTA導入による効果と解釈された。 保護者の回答によるTA導入前後の児童の学校モラールの変化は、3,4年生では、有意差こそ少ないが、ポジティブ変化が多く、評価バイアスを考慮すると、かすかにTA導入の効果を推測できる。保護者の回答による5年生児童の学校モラールは、やはり担任教師の出産休暇のよるネガティブな影響が見られた。保護者の回答による6年生児童の学校モラールの変化は、児童の回答以上にポジティブ変化が見られた。 これらの結果を総合すると、小学校における大学生のTA活動は児童の学校モラールによい影響を及ぼしていると言えよう。  

キーワード

ティーチング・アシスタント(TA)、学校モラール、因子分析、地域貢献