要約

 福祉事務所制度は、戦後まもなく、生活保護事務を実施する機関として発足した。その誕生は「妥協の産物」であった。発足後、厚生省は福祉3法時代における福祉事務所の体制整備を図るために、「福祉事務所運営指針」を出し、標準組織図を示した。その後、福祉6法時代になると厚生省は「生活保護事務所」からの脱皮を図るために「 新福祉事務所運営指針」を出すとともに「実験福祉事務所」の試みをした。一方、全社協からは画期的ともいえる「福祉センター構想」が出された。しかしこれらの試みや提案は、時期尚早などの理由により有効に生かされなかった。
 しかし1980年代後半になると、行政改革という外在的圧力によって福祉事務所は大きく転換・再編を余儀なくされた。「団体事務」化や「福祉8法改正」による権限委譲である。さらにその後の「地方分権一括法」による必置規制の緩和や市町村合併の推進、他方での「介護保険法」「社会福祉法」による「措置から契約へ」の移行にともない、福祉事務所の存在基盤は大きく揺らぎ、その変革を迫られることになった。
 変革期の福祉事務所においては「保健と福祉の統合化」、生活保護の「機能分離」が、今後のあり方を方向づける大きな課題となる。

キーワード

生活保護事務所  権限委譲  地方分権  措置から契約へ 保健と福祉の統合化  生活保護の機能分離