要約

 本稿は、条約の運用停止という行為が、統治行為としての性格をもつものであるかどうか、もし統治行為としての性格をもつものであるとすると、運用停止という結果に至るまでの一連の行為のうち、どの部分が裁判による審査が可能であり、どの部分が統治行為であって裁判による審査を免れるのか、という問題を解明しようと試みるものである。この問題の解明のために、まず、条約の運用停止についての基本的制度を確認する。次に、主にフランスにおける、条約の運用停止に関する具体的判決例を検討する。そして、最後に、条約の運用停止に統治行為論が適用できるかどうかを考察する。本号では、条約の運用停止についての、国際法・日本・フランスにおける基本的制度の確認作業をしたのち、フランスにおける条約の運用停止に関する具体的判決例のうち、事情の根本的な変化による条約の運用停止に関する判決例を取り上げ検討する。

キーワード

統治行為 条約の運用停止 条約 運用停止 事情の根本的な変化