要約

 本研究では,祖母の存在が育児期の母親のサポート・ネットワークに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.調査対象者は,三世代家族および核家族の母親51名(平均年齢=33.7歳)であった.このうち,父方祖母と同居している者(姑同居群)は23名,母方祖母と同居している者(実母同居群)が13名,核家族の母親(核家族群)は15名であった.各群の母親のサポート・ネットワークの特徴は以下のように記述しうる.まず,核家族群の母親においては,情緒的サポート,育児サポートとも夫の得点が最も高く,それに実母が続いていたが,サポート・ネットワークについての不満が最も多かった.実母同居群では,情緒的サポートも育児サポートも実母から最もサポートを受けていた.育児サポートのみならず情緒的サポートにおいても実母が夫を上回るサポート源となっていることは,他群と異なるこの群の特徴である.実母との強い結びつきを中心に母親のネットワークが形成されているため,育児に関しても,サポート源は他群と比較して多いとは言いがたいが,他に援助を求めなくとも充足していることが示唆された.姑同居群は,情緒的サポートは夫から,育児サポートは姑からというように,機能に応じてサポートを得ていた.また,姑からの情緒的サポートも核家族と比較すると高く,これまで育児をめぐる葛藤のみに焦点があてられがちであった姑−嫁関係のポジティブな側面が認められたといえよう.

キーワード

サポート・ネットワーク 育児期の母親 三世代家族 核家族