要旨

 本稿は家族アセスメントの過程でジェノグラムを適用するにあたり、日本の家族にそくした解釈の視点を提示することに論点をおいたものである。はじめにMcGoldrick,Mらが発展させた最新のジェノグラム記載方法を紹介した。次にジェノグラムから実際どのような読み取りが可能になるかを具体例に基づいて述べた。@家族へのストレス要因、A世代間伝承、B家意識の3点を解釈の柱とし、これに日本の社会的,文化的背景とかかわりの深い問題を加味して解釈の視点とした。具体的には日本の家族ライフサイクルに関連した子どもの受験、家庭内介護、経済的不況による問題、またかつての「イエ制度」が家族メンバーの役割に影響をおよぼしている側面に留意する必要性などを強調した。最後にジェノグラムを時系列的に用いる意義と効果について言及し、援助過程で将来のジェノグラムを描くことにより明確な展望をもった援助が期待できる利点を検討した。

キーワード

ジェノグラム 家族アセスメント 多世代的アプローチ 家族ライフサイクル