要約

近年、高齢者福祉サービスを提供するNPO法人が介護保険指定事業者として参入している。しかし、NPO法人に認証される為には,特定非営利活動促進法で定められた社会的貢献活動を行う必要がある.実際に、NPO法人が要介護高齢者に対する介護保険サービスに加えて、独自の非営利福祉サービスを同時に提供する事で様々な課題が生じてきている。そこで拙稿では介護保険事業を行うNPO法人の実践上の主な課題について考察する。
調査結果から熊本県下のNPO法人は、介護保険法施行直後ではNPO法人全体の認証数に対する割合が半数以上を占めていたにも拘わらず、徐々に認証の増加数に対する介護保険事業を行うNPO法人の増加数が減少している事が分かった。地域性については、生産年齢人口が多い自治体においては存在数も多くなり、過疎地域等では少なくなっていた。よって、営利企業の参入が困難な地域におけるボランタリーな側面を持った介護保険事業を行うNPO法人の役割が期待される反面、実際にはあまり機能していないことが推察できた。また、相談体制については殆どが24時間体制で行っていたが、社会福祉士の配置が少なく相談従事者には様々な職種の者が関わっていた。ボランティアの受け入れについては、殆どのNPO法人は受け入れ体制を整えており、将来的に地域福祉教育の場として機能することが考えられる。
結論として指定福祉NPOの主な実践上の課題には、@専門性の確保とケアの質A非営利福祉活動における利用者負担のあり方B福祉ニードキャッチの方法C地域福祉活動における住民参加とプライバシーD情報提供体制とネットワーキングの方法E非営利福祉活動と関係法規Fボランティアの捉え方等の問題が存在する事が分かった。

キーワード

@指定福祉NPO、A高齢者福祉、B介護保険制度、C実践課題